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Directed and Produced by
純谷吉松(Itoya Kichimatsu)


■1999年8月のニュース一覧
▼[1999.08.31]ワイヤード竹下通り沿い
▼[1999.08.29]新しいiMacの「大事」
▼[1999.08.28]シロカニペ ランラン ピシカン…
▼[1999.08.27]伝説の降臨
▼[1999.08.26]博愛の写真屋
▼[1999.08.25]境界線の青を消せ
▼[1999.08.24]あなたは誰? 私のすべてを与えていいの?
▼[1999.08.23]TVを滅ぼすもの
▼[1999.08.21]フリーフリーフリー
▼[1999.08.20]音楽配信とクラックの蜜月
▼[1999.08.19]ゲームという星の下でなく
▼[1999.08.18]ほんとうのあたしの居場所
▼[1999.08.17]人は皆,繋がっている
▼[1999.08.16]e over i
▼[1999.08.15]世界の終わりとハードボイルドアイコンランド
▼[1999.08.14]これまでの日本のネットワークそ〜かつ
▼[1999.08.12]電話たるか,モバイルたるか
▼[1999.08.11]観えぬ皆既日食を観に行こう
▼[1999.08.10]ロボットに求めている本質
▼[1999.08.08]ゲームの「次」
▼[1999.08.07]ワイヤード上の情報について
▼[1999.08.06]なら,とんちを効かせたハックが必要?
▼[1999.08.05]砂上の楼閣を映す鏡
▼[1999.08.04]まるでポイ捨てのように
▼[1999.08.03]漆黒のブラックボックス
▼[1999.08.02]子供の喧嘩の顛末は
▼[1999.08.01]ワイヤードとETの交差点

■1999年9月のニュース一覧
■1999年7月のニュース一覧


[1999.08.31]
  ワイヤード竹下通り沿い


 ▼カレッジ・スポーツ・スターが危ない!続々登場する新手のポルノ・サイト(VSN CUBE)
  http://www.virtualshoppingnetwork.com/netwatch.htm


 80年代の竹下通りでは,生写真を売る屋台が軒を並べていた。今は僅かな店舗数になってしまったが,その代わりに,ワイヤードにはそれとおんなじ雰囲気を持った店があちこちにある。

 ネット上でカレッジスポーツスターを隠し撮りしたポルノサイトの存在が人気を呼び,NCAA(全米カレッジ・リーグ)関係者を悩ませている。アメリカでは,カレッジスポーツの花形プレーヤーといえば,ローカル・ヒーロー。メディアにも大きくフィーチャーされる。しかし,カレッジスポーツということで,警備は甘く,ロッカールーム,シャワールームに入り込むことは簡単である。ポルノサイトの経営者は簡単にサイトをクローズして行方をくらませてしまうため,サーバー会社や何らかの関与をした業者を片っ端から告訴し,損害賠償を求めるよう,弁護士チームは策を練っている。

 私の好きなアメリカンフットボールでは,シュガーボールやオレンジボールなどの試合はとんでもない視聴率を稼ぎだすし,カレッジといえど,その人気の高さは日本人には計り知れない。日本の高校野球や六大学の比ではなく,「わしはシラキュース大の歴代のクォーターバックの名前を全部云える」なんていう親父もいたりする。その選手達の人気はおしてはかるべし。だがプロと違って警備は甘い。そこを突いた商売とのこと。なんとも,うまいところを突いている。

 まぁポルノかどうかは置いといて,基本的には原宿竹下通りなどのアイドルの生写真売りと発想は変わらない。というか,まったく一緒。人目に触れず,購入できるため,ネットの方が繁盛するだろう。一時期,とんでもない数の店舗だったあの生写真売りも今はひっそりとしたもの。雑誌などのスキャンを大量にアップしたり,ちょいと手を施してアイコラを作ったりと,ネット上へ移行して,カタチが変わってきているだけか。あの,猥雑とした,煩雑とした,雰囲気だけは変わらずに残っているし。




[1999.08.29]
  新しいiMacの「大事」


 ▼アップル、来週火曜日に新製品を発表へ (CNET JAPAN)
  http://japan.cnet.com/News/1999/Item/990828-1.html


 コンシューマーパソコン市場に華々しくカムバックしたアップル。その最大の武器,iMacのメジャーバージョンアップの時を迎え,より大きなムーブを保つために大事なこととは,なんだろう?

 発売から1年が経過したアップル社のiMacに,コードネーム「キハイ」と呼ばれる新バージョンがまもなく登場と噂されている。発表は,早ければアップル社も重大なニュースがあるとしている,31日に行われるシーボルド出版会議での,アップル社暫定CEOスティーブ・ジョブズ氏の基調講演で行われる模様だ。新型iMacは,さらに大きなモニタを搭載し,プロダクトデザインにも変更が加えられており,オーディオ機能も改良されていると伝えられている。

 新型iMacの予想をしよう。その壱,DVDドライブの搭載。アップルはマックがいち早くCD-ROMドライブをすべてに搭載したあの日のように,DVDドライブをすべての機種に標準で搭載することで,DVDを見たいならMacを買えばよいというイメージを欲しがっている。その弐,iMacでのエアポートのサポート。iBookについているのなら,iMacに付けないわけはない。エアポートのアンテナがあの婉曲のフォルムのどこに入るかはわからないが。その参,ファイヤーワイヤーの装備。アップルがファイヤーワイヤーを本当に普及させたいのなら,またアップルがFireWireで本当に業界のイニシアティブをとりたいのなら,iMacへの装備が最大の攻撃となる。

 はたして,それらの予想のすべてを実現して,iMacの魅力を損なわない価格を設定できるかが微妙なところだ。今のiMacに求められているのは,期待以上の高性能よりも,買い求めやすい価格,である可能性は高い。iMacの求めるものと求められるものとの差異を意識しないわけにはいかない。…だが,もうひとつ。その差異を気にするあまり,今まで中途半端なものを作ってきてしまったという愚を,繰り返さないこと,これがいちばん大事。




[1999.08.28]
  シロカニペ ランラン ピシカン…


 ▼ネットやパソコンでアイヌ語使用が可能に(asahi.com)
  http://www.asahi.com/0826/news/national26023.html


 シロカニペ ランラン ピカン, コンカニペ ランラン ピカン。ワイヤードがすべての情報を保存することを目的としているのなら,表記できないこの言葉に,悔しさの涙がにじみ出る。

 日本工業規格(JIS)の新しい文字コードを検討してきた日本規格協会の符号化文字集合調査研究委員会が,アイヌ語の表記に必要な20字を含む最終案をまとめ,インターネット上で公開した。アイヌ語の表記に使われる文字は,小文字の「ク・シ・ス・ト・ヌ・ハ・ヒ・フ・ヘ・ホ・プ・ム・ラ・リ・ル・レ・ロ」と、半濁点が付いた「セ・ト・ツ」。これにより,アイヌ語の活字化が楽になり,普及を助けるとみられている。

 上記の「シロカニペ…」というのは,19歳で死したアイヌの知里幸恵がまとめた『アイヌ神謡集』の中の一節。日本語訳では,「銀の滴降る降るまわりに,金の滴降る降るまわりに」となる。文庫本では,アルファベットと日本語訳が対になっている。アルファベットにしたのは,カタカナ表記では,表現できない音があったからだろう。上記の一節でも「ピシカン」の「シ」は,実際は小文字の「シ」の音となる。もちろん意味なんてまったくわからないのだが,アルファベットの音を読むと,純粋にその音の美しさが,神謡としての意味をもって,心に響く。

 今回の最終案について,使う機会の少ないアイヌ語の表記などより,黒丸などの記号や丸英字などを入れるべきだという論議がある。だが…。ワイヤードは,距離的感覚を感じることなく,地球上のすべての文字情報を保存し,アクセスを共有するのを第一目的としている。現在のブラウザも,対応文字コードには幾多の言語が存在する。そしてそのコードは,_言語の数だけ_存在しなくてはいけない。アイヌ語をワイヤードがサポートすることは,すべてのアイヌの伝承文化を共有できることを意味する。それが,黒丸なんかを増やすことよりもよっぽど意味を持つことは,子供でも気付くことだろうになぁ。




[1999.08.27]
  伝説の降臨


 ▼伝説の『ザナドゥ』ついにコード公開(WIRED News)
  http://www.hotwired.co.jp/news/news/technology/story/2977.html


 現在のウェブの前に,ザナドゥあり。すべての源は,そこにある。これは,伝説としてしまうには,あまりにも生々しい思想だ。そして,その思想は,遅ればせながら今,姿をあらわにした。

 24日午後にカリフォルニア州モントレーで開催されたオライリー・オープンソース大会の席上で,慶応義塾大学客員教授テッド・ネルソン氏は,現在のウェブのアイディアの源ともなったザナドゥのソースコードを公開した。ザナドゥとは,マルチメディアとハイパーテキストによる出版システムであり、情報の世界規模の恒久的保管場所として機能する。このソースコードはUdanaxのサイトから入手できる。

 おおまかな流れは,過去記事を読んでください。38年前にハイパーテキストを考案することで,ザナドゥを具現化したテッド・ネルソン。彼は,文中にもあるようにやはり,預言者,であったのかもしれない。現在のウェブはザナドゥの思考と,ネルソン氏のハイパーテキストの要素を大きく取り入れて成り立っている。

 ここまでウェブが構築されてしまった中で,ザナドゥが幅を利かせる可能性は少ないが,ネルソン氏による現在のザナドゥ構想には,著作権に関する問題や電子支払いに関するシステムが考慮されており,また揺らぎない情報の確立と,その情報への均一なアクセスという点でも現在のウェブの上を行くものだ。今までザナドゥは,紙の上の理論でしかなかったが,ここで初めて,その姿をあらわにした。将来的に,ザナドゥのコードが,現在のワイヤードのプロトコルに反映されていくことは,確実だろう。伝説は,その時,本当に実現する。




[1999.08.26]
  博愛の写真屋


 ▼Adobe Photoshop 5.5,Adobe GoLive 4.0,9月下旬より発売(MacWIRE ONLINE)
  http://www.zdnet.co.jp/macwire/9908/25/n_adobe.html


 ウェブクリエイター用のフォトショップが欲しかったのに,発売されるのはウェブクリエイター_も_使えるフォトショップだった。フォトショップはどんな罪人をも見捨てない博愛の人のように,すべてのしもべを従えようとしている。

 アドビシステムズ社は,フォトショップ5.5J(市場予想価格10万円前後)を9月17日に,ゴーライブ4.0J(市場予想価格4万円前後)」を9月24日に発売すると発表した。フォトショップ5.5は,これまで別パッケージだったイメージレディーをコンポーネントとして統合,ウェブグラフィック作成機能が大幅に強化された。

 皆さま,大変よくお使いのフォトショップ。結局ウェブを制作している人たちは,制作過程のどこかでフォトショップを使っている人が多い。ウェブ上で写真を使用するときに,フォトレタッチという観点から,ビットマップを加工するにはフォトショップがいちばん性能が確かだ,ということと,とにかく操作に慣れちゃってるから,といった理由からだろう。5.0までは,ウェブ素材を作るためには何も考えられていないソフトだったのだが。結果としてイメージレディーを統合,という荒技でウェブで利用するユーザーを取り込んじゃえ,というあこぎな始末。

 私はこの5.5を,ウェブと印刷の差異を安易に考えているソフトと思う。印刷で使うソフトとウェブで使うソフトを一緒にしてしまうなんて,頭がおかしすぎる。すべての人を平等に扱い,すべてのものに利益を与えよう,なんてのはどっかの宗教みたいに胡散臭い気もする。まぁ違法に高い価格を考えたら,そんぐらいの機能を盛り込んで当然かもしれないけどね…(^^ゞ。ということで,私はお値段もほどほどなファイヤーワークスで今日もしこしこウェブを作り続けるのでありました…(←たんなる貧乏性かなぁ…)。




[1999.08.25]
  境界線の青を消せ


 ▼ブルーな気分はWebのせい? 「6%がWeb中毒」と調査結果(ZDNet News)
  http://www.zdnet.co.jp/news/9908/24/webaddict.html


 ワイヤードのせいでブルーな気分になってるって? ならいっそのこと,こっちに来ちまえばいいのに。こっちで生活して,こっちで暮らす。それなら,ブルーな気分になることもないだろ。

 ABC Newsが22日に公表した,インターネット利用者を対象とした調査結果によると,6%の人がウェブ中毒症に陥っており,情緒不安定や失業,離婚の原因がWebにあると答えた人も相当数に上った。調査結果の内容では,4人に1人が,無力感,罪悪感,不安感,憂鬱感を払拭するためにネットにアクセスし,7人に1人が,ネットのことばかり考えており,25人に1人が,ウェブサーフィンの習慣により,失業したり雇用機会を逸した,または他人との大事な関係を失った,と回答している。

 ふと旅行に出かけてワイヤードにアクセスする手段を失ったとき,自分の右手に違和感を感じる。キーボードを探し求める手,マウスを求め続ける手。リアルな風景にリアルさが感じられない。ワイヤードの方がよっぽどリアルだ。こんな感覚に陥る私は,ウェブ中毒の1人かな(-.-)?

 6%という数が多いのか少ないのかよくわからないが,最近とみに増えているニュース系のサイトなどを見ていると,このページの制作者さんたちは,ワイヤードにアクセスしている時間がとてつもないんじゃないかと感じてしまう。また掲示板で,一日中書き込みをしている固定ハンドルの人はリアルの生活をしているのだろうかと感じてしまう。なら,ワイヤードで生活してしまえばいい。リアルとワイヤードの境界なんて取っ払って。そうすれば,ウェブ中毒なんて云われることもなくなるし,てか?




[1999.08.24]
  あなたは誰? 私のすべてを与えていいの?


 ▼ネスケ4.x Exploit(DEF CON ZERO)
  http://www.ugtop.com/defcon0/hc/nc4x_ex_demo.htm


 あなたは誰? とパソコンは問う。僕だよ,君の管理者だよ,と誰かが答える。ウインドウズはある意味,疑うことを知らない。そしてその身のすべてを,彼に,与える。

 ウインドウズ用ネットスケープ・コミュニケーターのバージョン4.06J,4.6Jにおいて重大なセキュリティホールとなるであろうバッファオーバーフローを発見された。これらは,ウェブブラウザのEMBEDタグの扱いに問題があり,pluginspageオプションのバッファがオーバーフローを起こす。それにより,リモートからトロイをインストールし,実行することも可能と思われる。デモサイトが用意されており,ウインドウズ98の起動に際するコードが実行される。

 私はマシンがマックなので試してみることができないですが,友人の話では無事に(?)実行されたそうです。デモサイトのソースを見ると非常に単純な(でも意味不明な)EMBEDタグがあるだけ。詳細はさっぱりわかりませんが,わくわくするもんです(^_^)(←なにをする気だ)。さらに,このセキュリティーホールはブラウザの基本的な仕組み自体のバグであり,JavaやアクティブXなどのようにユーザーがON・OFFの設定をできないので,問題は大きい。ウインドウズでもマックでも,利用者はすべてのコードを実行可能な管理者権限が与えられている。これは,ネットワークと接続されているマシンでは,僅かなバグで,すべての権限を握られることになりかねないことになる。そこのところがユニックスなどとネットワークを意識したコンピュータとの大きな意識の差であるとも云えるが,ある意味,簡素なパーソナルコンピュータの背負う十字架とも云えるのか。

 そのうち,常時,ワイヤードにすべてのパソコンは接続されるだろう。それが普通のカタチとなったとき,現在のパソコンはあまりにも無防備すぎる部分がある。パソコンの目の前に座っているのが,また,リモートでアクセスしている何者かが,本当の管理者であることはわからないのだから。WWWC,ベッキー,ネスケととどまることを知らないセキュリティーホールはそのことを教えてくれている。




[1999.08.23]
  TVを滅ぼすもの


 ▼HDビデオレコーダの台頭でテレビCMは衰退する?(ZDNet News)
  http://www.zdnet.co.jp/news/9908/23/tv1.html


 インターネットに夢中になっても,TVは付いている。TVを観ながらネットに接続しているながら族は多い。だが,TVを滅ぼすのはパソコンかもしれない…。

 商品広告で世界最大の存在のプロクター&ギャンブル社(P&G)が,主要パーソナルビデオレコーダ(PVR,もしくはデジタルビデオレコーダ)メーカー2社と共同で,新しい広告形態の開発を進めている。従来のVTRでも,録画された番組のコマーシャルを飛ばすことはできたが,早送りされている間も,CMは基本的に視聴者の目に入っていた。PVRでは簡単にCMの平均時間である30秒先まで番組を即座に飛ばしてくれる。このようなシステムでいかにCMを観させるかは大きな問題なのだ。

 ソニー社バイオRは,パソコンのあり方自体を変質させた。いや,TVと,パソコンの,存在を,歪ませた。これはスタイルの壁をぶち破ったバイオノート以上の衝撃があったと思う。テレビ番組をハードディスクに録画し,それをパソコンで観る。音楽はCDとMDに進化したのに,ビデオはいまだにテープメディア。消えるべき運命のテープがここまで残っているのは次なる存在が現れなかったため。なら,このバイオRがその扉を開く可能性は高い,と思われる。

 早送りなんて一瞬ですんでしまうし,記録させたしおりの個所も一瞬で呼び出せる。外部メディアを利用して,劣化させることなくいつまでも保存できる。インターネットTVガイドを利用すれば番組予約を間違うこともない。だが,パソコンでのデジタルビデオレコードが普及したとき,私たちはCMを見るのだろうか。CMが見られなくなるとTV番組は衰退していく,当然。その時が,TVが本当に衰退するときなのかもしれない。




[1999.08.21]
  フリーフリーフリー


 ▼MacWIRE Express無料化のお知らせ(MacWIRE Express)
  http://www.softbank.co.jp/macwire/


 タダという言葉ほど,ワイヤードで人を引きつけるものはない。そしてその陰で,十分なブランドと広告収入が得られれば,ユーザーがお金を払うべきものは無くなる。リアルワールドでの金銭に関する思考が歪んでいき,人々は複雑な苦しみにさいなまれる,という予想は,どうかな?

 ソフトバンク社の提供するマック関連のメールマガジン「MacWIRE Express」が9月1日から無料になる。現在の購読料は,半年4,800円,年間9,600円。無料化を報告するメールでは,記事公開までの時間の短縮,増大するコンテンツをタイミングよく掲載する,さまざまな情報提供スタイルに対するニーズに応える,などの課題をあげ,ウェブ上のMacWIRE Onlineをメインコンテンツに移行する意志がみえる。

 私も創刊当時から購読していたMacWIRE,無料化の動くはちょっと驚いた。購読者数が減っていたのかはわからないが,海外でのエキスポなどでも,きちんと取材をし,できる限り早く詳細な情報を提供しようという意図は感じられていた。プッシュという技術はあっさりとすたれたが,たまに送られてくる速報の号外は役に立つことが多かった。もともと,紙媒体雑誌の編集部がそのままメールマガジンに移行したような感じなので,その意味での読みやすさもあったのだろう。取材にしても,記事作りにしても,特集にしても,紙雑誌的に色を濃く残していたしネ。

 折しもZDNet Newsでコラムニストのジョセ・バーストが「業界の大物が何でも「無料で」差し出す理由」を書いている。ネット上では,広告などの手段で稼いでユーザーには無料で製品などを提供される。ニュースとてその限りではない。しかしそんなに簡単に事が運ばない新聞や雑誌などの既存メディアは,このワイヤードの流れと相反して生きていかなくてはいけない。もうちょっとワイヤードが日常に入り込んだとき,そこに大きな戦争が巻き起こるかもしれないな。




[1999.08.20]
  音楽配信とクラックの蜜月


 ▼MSの新音楽フォーマットが早速クラックされる(WIRED NEWS)
  http://www.hotwired.co.jp/news/news/technology/story/2943.html


 着せ替え人形に,服を着せることができるのは服を脱がすことができるから。とあるファイルにプロテクトをかけることができるのは,そのプロテクトをクラックできることの証明。

 米国マイクロソフト社は17日,MP3に代わるものとしてウィンドウズ・メディア・オーディオ(WMA)フォーマットを発表したが,その直後から,再生に関する制限を取り除くクラッキング・ソフトウェアが出回り始めた。WMAファイルは,再生を1台のパソコンに限定したり,再生可能期間や回数を制限したりできるなど,非常に優秀なセキュリティを有しているとされていたが,MP3を扱うウェブサイト,ディメンション・ミュージックに登場したunfuck.exeは,それらの制限を外すことができる。

 1日,というか24時間も持たずに破られてしまうプロテクトというのは,う〜ん(^^ゞ。はたから見てると,そのプロテクトを付けるのにいくらかでも時間を割いたんだろうし,恥ずかしい気持ちにおそわれてしまいそうだが…。まぁMP3の問題も含めて,ネットワークでの音楽配信で儲けようという人たちにはあれやこれや問題が多すぎて,明るい未来が見えない。純粋に音楽を楽しみたい人たちには,願ったり叶ったり(^_^)。

 しかし,ソフトウェアプロテクトはすべて,ソフトウェアクラックで対処ができるのは当然のこと。着せ替え人形に服を着せることができるのは,その服を脱がすことができるからなのとおんなじ論理。ソフトウェアクラックのできないソフトウェアプロテクトというものは存在しない(もちろん,その難度はさまざまだろうが)。そう考えると,ネットワーク上での音楽配信は,ハードという要素が存在しないことで,本質的にプロテクトのない,裸の状態とも云える。マイクロソフトの失敗は,決して特別なことではなく,普通なこと,と考えるべき。




[1999.08.19]
  ゲームという星の下でなく


 ▼次世代プレステの正式発表は9月17日--ゲームショー会場で!? (NikkeiBP BizTech News!)
  http://biztech.nikkeibp.co.jp/wcs/show/leaf?CID=onair/biztech/gen/79424


 巨大化し,幾多のものを取り込み,その行く道の先は,ゲームという言葉だけに収まっていることを許さない。それを,ユーザーが待ち望んでいるかどうかは,まぁ置いといて。しかし,もともと,彼はゲームという星の下に生まれたのではないのかも,しれないナ。

 ソニー・コンピュータエンタテインメント社(SCEI)が今年末に発売を予定しているプレイステーション2に関する情報がいくつかでている。SCEIは同社ホームページ内に,次世代プレイステーション情報のページを開設。9月17日の東京ゲームショー'99秋の初日に,プレステ2を発表,その模様をインターネットでライブ中継する。またこれは正式発表ではないが,あるアナリストの報告としてプレステ2の発売日は1月23日,価格は45,000円,初期出荷台数は40万台で,2000年3月までに100万台が出荷されるとのこと。

 立て続けのプレステ2ネタに,ちょっといかがわしさも漂うほどでした。ついでに,米国では16日からプレステの価格が25%引き下げ,99ドルになるとのこと。これは9月9日発売のドリキャスを牽制したものだろうが,プレステ2へのエサ蒔き要素も十分(BizTech News!の記事)。正式発表まで1ヶ月を切り,スパートがかかってきた,と云うところか。

 ゲームハードという概念を崩すのが,プレステ2について回る言葉となる。DVDは,もちろんVideoタイトルを目的とする人も多いだろうし,USB,IEEE-1394,PCカードスロットの搭載は,まだ使用目的をはっきりと公開していないが,豊富な周辺機器との接続を目論んでいるだろう。デジカメやデジタルビデオ,パソコン,デジタルオーディオプレイヤー,AIBO(ヲッ!)などとリンクしたとき,プレステ2はゲームではない,なにか,になりうるのだ。




[1999.08.18]
  ほんとうのあたしの居場所


 ▼パイオニアの名を語る詐欺メールが世界中に(ZDNet News)
  http://www.zdnet.co.jp/news/9908/17/pioneer.html


 ワイヤード上に,あたしの知らない「あたし」がいるかどうかはわからない。その「あたし」が,あたしと同じ価値を持ってしまうこともあるのかもしれない。あたしは,「あたし」ではない,あたしなのに。

 パイオニア社は,同社の名を語る詐欺メールが世界的に出回り,金銭の要求をしていることをホームページ上で告知し,ユーザーの注意を促している。この詐欺メールは,Pioneer Internationalと名乗る会社からのもので,「パイオニア製DVDプレーヤーが当選しました。製品を受け取るには郵送料として,米国内の場合20USドル,外国の場合は30USドルを送金して下さい(一部略)」という英語の文章が記されている。被害報告は今のところないが,パイオニアでは法的手段も含めて対応を検討している。

 今のところ2件の報告が寄せられているだけで,まぁ小規模なイタズラと思われるが,実際にどれほどの数のメールが送信されているのか気になるところ。ワイヤードに完全な匿名などないのは承知のことだが,このような別の名を騙りリアルワールドとの偽装を果たす試みは,はたから見ていて楽しい。なにも,現実の姿を偽るのはネカマだけじゃなくってさ。

 例えばの話。A社の名前でA社の新製品の情報が送られてくる。人事異動の情報が送られてくる。キャンペーンの情報が送られてくる。A社のサーバーからちゃんと送信されて(踏み台にされているだけかどうかは置いといて)。名を騙られているA社が知らないところで,情報が事実として動いていく。それに対してA社はホームページ上でそのような事実がないことを告知し,本当の情報はこうであると告知する。だが,その告知自体,A社の名を騙ったクラッカーによる書き換えだったとしたら…。A社が発言の場を持つごとに,A社の名を騙った者が,もうひとつの事実として,情報を流し続ければ…。あたしの知らない「あたし」の存在を,否定する術は,きわめて少なく,なりかねない。




[1999.08.17]
  人は皆,繋がっている


 ▼第10回CSJWWW利用者調査結果(iNET Guide)
  http://www.csj.co.jp/www10/index.html


 ワイヤードでは,リアルワールドよりも明確に,人と人が繋がって社会が形成されている。その「繋がり」こそが,「ワイヤード」という赤い糸。人は皆,繋がっている。

 サイバースペース・ジャパンが1995年6月から定期的に行っているWWW利用者調査アンケートの,第10回目の結果が公表された。今回の調査結果で特に目を引くのは,利用者の男女比の推移で,4年前の調査開始時には4.4%であった女性利用者の割合が,今回は39.4%と,ついに約4割を占めるまでになった。また,接続の方法ではISDN利用者が25%を突破し,利用ブラウザはインターネット・エクスプローラーが70%以上にシェアを拡大。回答者の約80%が1日5通以上のメールを受信しているほか,オンラインショッピング経験者が50%を超えた。

 確かに,ネットワークをコミュニケーションツールとしてのみ考えたとき,女性の方がそれをそつなく使いこなす能力に秀でている。それは,一般論として女性の方がそのようなコミュニケーションに関する欲求を強く持っていることによる。思えば,パソコン通信の時代は,まだインターフェイスを含んだシステムが整っていなかった。成熟したコミュニケーションを成立させるには,より高度なシステムが必要となる。現在のパソコンの能力は,やっと我々のコミュニケーションを取り持つにふさわしい高みにまで上ってきた,とも云える。

 さてでは,その高度なネットワークシステムとはどのようなものか。出会うことの容易さ,意志を伝えることの容易さ,表す部分と隠す部分の容易さ,そして,想いをかよわせることの容易さ。女性利用者の増加は,そのようなシステムが具現していることの証しである,とも思われる。




[1999.08.16]
  e over i


 ▼デスクトップデイリー売れ筋ランキング(Yahoo!ニュース)
  http://news.yahoo.co.jp/ranking/bcn/cpt/desk_d.html


 フェイクがオリジナルを超えることはない。だが,フェイクがオリジナルとして通用することはある。ただ,それになんにも疑問がない社会は,どこかが間違っている可能性が高い。

 BCNがまとめているYahoo!ニュースのパソコン売れ筋ランキングの8月13日調査分で,ソーテックのe-oneが首位に立った。長く首位を守ってきたアップルのiMacが陥落,また今までトップ20に入っていたiMacの5色からグレープが脱落した。e-oneは,7月20日の出荷以来,6→6→2→3→8→2→2→2→2→2→2→2→2→1位とコンスタントに売り上げを伸ばしながら首位に立った。e-oneの仕様は,ブルーのスケルトン筐体に,インテルセレロンの433MHz,64MB SDRAM,8.4GBHDD,15インチモニタ,56Kモデムと10base-TのEthernetボード,フロッピードライブ,24倍速CD-ROMドライブに,豊富なソフトウェアをバンドルし,128,000円となっている。

 発表時には大笑いしていたのだが(^o^),アップルとしては笑ってもいられなくなっただろうか。登場からかなりの月日が経ったiMacだが,まさか首位を譲り渡すことになったのがこのe-oneとは。なにげにe-oneは一般の認知度が高い。新聞の一面を使った広告を出したり,TVCMにラルクアンシェルを使用することで,女子高生などへのアピールも効果を奏しているという。iMacと同じ(またはそれ以上の)コストパフォーマンスを発揮し,それでウインドウズが利用できるなら,飛びつくのもわからないではないのだが…。

 ここからは私見。e-oneを買った人,また買おうと思っている人に文句はない。しかし,e-oneはその存在自体が,大いなる恥でしかない。iMacの色とおおまかな外観だけを盗み取ったマシン。それは,それを補ってあまりある性能があったとしても消しようがない。中途半端なデザインの盗用は,iMacでの,コネクタのまとめ方や,ケーブルの色彩の処理,僅かな鋭角部分も持たないようにしなやかなまとめたケース,などが反映できないでいることで明らか。内部も,実はメモリスロットを持っているのに小さな筐体に押し込んでいるためにアクセスできず,メモリ増設ができないという状況らしい。もちろん,ヒット商品にそれを模した商品が出てくるのは世の常だが,e-oneはその域を超えている。ものを作ることの哲学,を放棄した寂しさを感じる商品だ。そんなものが大いに売れる社会というのは,どんなものなんでしょうかねぇ('_;) 。




[1999.08.15]
  世界の終わりとハードボイルドアイコンランド


 ▼CIN 緊急報告(Virus LAB)
  http://www.otsuka.bunkyo.tokyo.jp/virii/


 「ハードボイルドワンダーランド」が情報の管理と掠奪による世界だとしたら,「アイコンランド」は,GUIにおける情報の管理統括と隠蔽を意味する。心のない世界である「世界の終わり」との不自然なリンクは,物語として壮大,かな?

 CINは,マックOS8.5以降で採用されている32bitカスタムアイコンのルーチンをいじることにより,アイコンの描画の際にシステムが処理しきれない命令を送り,フリーズさせる。外部システムから起動しても,ファインダー起動時に自動的に内部システムのアイコン描画を行うため,8.5以降のOSからの起動はできなくなる。特に,新型のiMacや新しいG3(Blue & White)は,専用の8.5以降のOSしか提供されておらず,不具合を回避できない危険性が高い。

 このCINは,カスタムアイコンだけで発症させることができ,プログラム部分を有していないのでトロイの木馬とも云いきれない。もちろん増殖能力もないので,ウイルスでもないし,トラップトロイという感じだろうか。まだ出回っていないが,将来的に同様のトラップを利用したものが流通する可能性もあり注意が必要。簡単には回避できないが,方法がないことはないのでVirus LABのページでチェックして欲しい(気付いたときにはもう遅いとも思うが…)。

 もともとは,マックOSが8.5以降が使用している32bitアイコンのバグホールによるもの。8.5以前のアイコンは,すべて8bit(1ドットの色を256色=8bitで表示)によるものだったが,それが8.5からは,32bit(1ドットの色を256x256x256=1677万7216色=24bitで表示し,それに8bitの透過度が加えられている)になっている。当然,それによってアイコンのデータ量も増え,描画にも時間がかかる。そこでその遅滞を緩和するために圧縮ルーチンのようなものが使われており,それをついたのがこのトラップになっている。とっても単純なんだけど,ひどく効果的ですなぁ…。ちなみに私は,8.6のシステムしかないので怖くて実験してません(^^ゞ。




[1999.08.14]
  これまでの日本のネットワークそ〜かつ


 ▼ソフトバンクと東電,米Microsoftが高速インターネット接続会社設立を発表(ZDNet News)
  http://www.zdnet.co.jp/news/9908/11/softbank.html


 日本におけるネットワーク利用者の割合は約10%。米国の25%に比べてあきらかになにか,障害があったのは明白だ。そしてその障害とは,一企業の頭の悪さでしかなかった。

 ソフトバンク東京電力米マイクロソフトの3社は8月11日,合弁で通信会社を設立,低価格での常時接続可能なインターネット通信サービスを2000年9月から開始すると発表した。新会社の資本金は3社が31%ずつを負担,ヤフーも5%出資し,10月1日から実験サービスを開始する。サービスは,東京電力の光ファイバー網を利用するもので,個人にはMbpsの単位を数千円で提供するとみられている。

 日本には,まともに個人がインターネットを利用できる環境がなかった。そのすべての元凶はNTT,ただひとつにあった。プロバイダに料金を払っているのに,その接続時間に応じてNTTがむしり取っていた料金は,電話もネットワーク接続もおんなじと云うなんとも不可解なもの。なら定額制にして欲しいという要望には,夜の11時からと云う普通の社会人を無視したテレホーダイでごまかし続け,そろそろ本気になるかと思われたNTT分割後の発表も月1万円程度によるISDN回線という無知の極み,暴利をむさぼるもの。よくまぁこの状況で日本のネチズンたちがまともにワイヤードに参加してきたものだと感心する。

 その状況に業を煮やしたかのような,ソフトバンクにマイクロソフトなどが結託してのこのニュース。インフラは東京電力の設備によるものをメインで使い,無線,メタルを組み合わせる。無線は,果たして非常にたくさんの利用者を抱えたときに問題ないかどうか不安だが,それとてNTTよりはよっぽどましだろう。ぜひこれに対する,NTTの「まともな」対応策を披露願いたいものだ。




[1999.08.12]
  電話たるか,モバイルたるか


 ▼NTTドコモの「iモード」,100万加入を突破(日経ネットビジネス)
  http://nnb.nikkeibp.co.jp/nnb/NEWS/19990809001.html


 携帯電話から,「電話」という言葉がとれてしまう日が来るのだろうか? 携帯電話は,数年後,いちばん身近なモバイル機器となっている可能性は,高い。

 NTTドコモの携帯電話向けデータ通信サービス「iモード」の契約数が8月8日,100万件を突破した。iモードは4月に139,000件,5月に258,000件,6月に523,000件と倍々に利用者を増やしており,NTTドコモでは,年内に400万件の利用を目標としている(NTTドコモのニュースリリース)。

 携帯電話の行く道先には,今,二つの大きな分かれ道がある。一方が電話としての機能をよりきちんとすること。cdmaOneによる音質の改善は,電話としていちばん大事な,通話の心地よさを取り戻すIDOの狙いだ。そして,もうひとつの道が,情報端末という機能へのシフトである。しゃべるだけではなく,文字情報を入手したり,送信したり,さらには銀行振込やチケット予約までもこなす,すでに電話とは呼べない携帯ナビ(Knowledge Navigator)である。cdmaOneにも,同様のEZアクセスサービスがあるが,どちらかといえば,おまけ的なサービスであることを感じさせている。

 利用者100万人突破に10ヶ月ほどかかったcdmaOneよりも,それを半年も経たず成し遂げてしまったiモードへの関心は高そうだ。特に普段からネットワークにアクセスしている人たちには,究極のモバイル端末として価値は高いだろう。NTTドコモは,たとえ電話を捨てても,次世代で生きていくデバイスを持っている,とも云える。




[1999.08.11]
  観えぬ皆既日食を観に行こう


 ▼今世紀最後の皆既日食をWebで生中継(BizTech News)
  http://biztech.nikkeibp.co.jp/wcs/show/leaf?CID=onair/biztech/food/77517


 「見えぬけれどもあるんだよ,見えぬものでもあるんだよ」というのは,金子みすずの詩だったろうか。ワイヤードにコネクトすることで,私たちは見えぬものを見る目を,行けぬところに行く足を,手に入れることができる。

 LIVE!ECLIPSE実行委員会は,20世紀最後となる皆既日食をインターネットで生中継する。中継時間は日本時間の8月11日の18時から21時ごろ。URLはhttp://www.solar-eclipse.org/。LIVE!ECLIPSE実行委員会は,リアルタイムで世界に生中継しつつ,今回は初めて「コロナ」の変化の様子を複数の地点から観測することに挑戦する。

 日食が起こる時間は,すでに日本では日没後になるため観ることができない。そこで,非常に観測に適しているヨーロッパから中近東にかけてカメラを設置し,生中継をしてくれるという。今世紀最後の皆既日食,実際に見に行ければいいのだが,それが無理なときは,ワイヤードに,コネクトすれば…。

 皆既日食は,悪魔の訪れと思われていた時期もあった。不幸の始まりと思われていた時期もあった。今,この世紀末,惑星直列を目の当たりに見せてくれる皆既日食は,なにか,感じさせてくれることも多いような気がする。私たちはワイヤードを介してどこへでも行ける。さあ,一緒に皆既日食を観に行こう。




[1999.08.10]
  ロボットに求めている本質


 ▼家庭向けロボット『サイ』(WIRED News)
  http://www.hotwired.co.jp/news/news/technology/story/2861.html


 「違う,違うんだ。僕は最初っから,「役に立つもの」なんて必要としていなかった。そんなことは,高性能になった食器洗い機や掃除機が,全部やってくれているんだから。僕が,本当に欲していたものは…」。

 ピッツバーグに本社を置くロボット製造会社プロボティックス社の家庭用ロボット「サイ」は,昨年12月から現在までに128台が売れている。サイは,あらかじめプログラムされた通りにカーペットに掃除機をかけたり,飲み物や郵便物のような軽いものを運んだりする。このロボットは695ドルで,プロボティックス社のウェブサイトで販売されている。

 サイについて,カーネギー・メロン大学ロボット工学研究所のイーバクシュ助教授は,より大きく可能性を広げる将来のために,2つの目標をあげている。1つ目がサイの「人格」をもっとはっきりさせること。2つ目がサイに強いサービスの感覚を教え込むこと。2つ目はまぁ当然として,やっぱり,意志を持たせること,コミュニケーションを可能にすること,人間らしさを感じさせること,がロボットが果たしていかなくてはいけない役割として必要であるようだ。

 私たちはロボットに何を求めているんだろうか? 勉強や家事や仕事などを助けてくれるものとも思うのだが,それはヒト型でなくてもいい(サイはまだ掃除機の先に車が付いたような感じだし…)。では,ドラえもん? 鉄腕アトム? それとも,あのメイドロボかな?(^_^) どれにしても,空想の世界のロボットは,意志と感情を持ち,人間と確かなコミュニケーションを持っているものだった。そうして私たちは,やっぱりそういう存在に憧れと期待を抱いていた。もしかしたら人間は,なにか仕事をしてくれることよりも,本能的にそういう存在を欲しているのかもしれない。ということで,AIBO対サイの勝負は今のところAIBOの勝ち,かな?




[1999.08.08]
  ゲームの「次」


 ▼上半期のゲームソフト,「FF」がトップ(日刊工業新聞)
  http://news.yahoo.co.jp/headlines/nkn/990806/nkn/081000000_nkn000019.html


 FF8は完全な情報宣伝による勝利だった(と思う)。ただ,それだけだった。ポケモンはキャラ勝ちとも云えるが,ゲームボーイというデバイスを活かした勝利でもあった。デバイスを活かすことができれば,その勝利には価値がある。さて,「ワイヤード」というデバイスを活かすことができるのは,誰?

 アスキーは5日,99年上半期のゲームソフトとハードの推定実売数をまとめた。それによるソフト推定実売数では,スクウェアの「ファイナルファンタジー8」が約347万本でトップになり,2位の任天堂「ニンテンドウオールスター!大乱闘スマッシュブラザーズ」に約250万本の差をつけた。メーカー別では,1位がスクウェア,2位が任天堂,3位がコナミ,4位がソニー・コンピュータエンタテインメント,5位がナムコ,6位がセガ・エンタープライゼス,という順位になった。

 今年上半期に発売されたゲームソフトでミリオンヒットとなったものはFF8だけで,しかも350万本。2位の任天堂の作品は100万本に届いていない。しかもFF8は,SCEIやナムコ,セガなどのトータルのセールス本数をも上回っている。この一人勝ち状態は,うがった見方をすると危うい状況とも思われる。ゲーム業界全体の活性化がなければ,ムーブメントの底は支えられない。東京ゲームショウなどに行くと,会場の若さと元気さを見て活気があるように思われるが,景気の低迷,ハードの巨大化に整わない制作システム,ゲーム作品自体のマンネリ化,など多くの問題が見え隠れする。

 では,次のムーブを支えるモノは,何か? ドリキャスもワンダースワンもネットワークに繋がり,プレステ2もそれを視界に入れている。ワイヤードを活かしたソフトで,ポジションを得るものは,次世代を支配できるかもしれない。それを実行に移しているソフトメーカーはまだない。「次」はそこにありそうな気がするが,どうだろう。




[1999.08.07]
  ワイヤード上の情報について


 ▼覚せい剤購入方法をネットで指南 大阪府警が全国初摘発(asahi.com)
  http://www.asahi.com/0805/news/national05042.html


 ワイヤードは,この世界にあるすべての情報を内包することを最終目標としている。「すべての情報」となるからには,それに眉をひそめる人がいる情報もあるだろう。だが,それも,人の知,のひとつ,であるのだ…。

 大阪府警保安二課と西成署などは,大阪市西成区「あいりん地区」での覚醒剤の購入方法をインターネットのホームページ「誘惑」(削除済み)で指南したとして,兵庫県の無職男性(22)を麻薬特例法違反の「そそのかし」の条文を適用して逮捕した。この条文を適用しての摘発は今回が初めて。男のホームページは約5ヶ月間で13万回のアクセスがあり,細かい購入の際の注意事項なども示していたという。

 逮捕された男性のページはここ。有料・無料で情報を提供していたが,摘発の要件は無料の方らしい。このニュースで重要な点は,実際にホームページ上で_販売していた_,と云うのではなく,そのような情報を_流していた_だけ,ということ。ならば,実際にソフトを配付したりしてなくても,「ワレズのやり方」とかの解説サイトをやっているだけで,著作権法に「そそのかし」とかいう条文を付ければ(いや,詳しくは知らないけどきっと幇助した場合に関する条文もありそうな気もする)摘発されちゃうってこと? まぁ覚醒剤は,昔も今も特に厳しく取り締まられているもののひとつ,だが…。

 「すべての情報はシェアされなければならない」。ワイヤードでは,すべての情報はフリー・ネットワークストリームに乗っていなくてはいけない。情報がシェアされて初めて,ネットワークはネットワークとしての価値を得る,力を得る。倫理的に許されない情報であれ,また実行に移した場合に法律的に許されない情報であれ,それを求めるかぎりは,手に取ることができるフィールドであるべきだ,と思う。その情報を知ったからといって,それを実行したり,悪用したりするかどうかは別問題。「情報の提供」だけをとらえて,罰する権利を,リアルワールドが持って欲しくない。強く,そう思う。




[1999.08.06]
  なら,とんちを効かせたハックが必要?


 ▼ハッカー攻撃を受ける前に自滅したMicrosoftの公開テストサーバ(ZDNet News)
  http://www.zdnet.co.jp/news/9908/05/mshack.html


 世界最強のハッカーであっても,侵入できないコンピュータとはどんなものだろか。だが,マイクロソフトはいとも簡単にそれに答えを出した。ちょっとばかり,とんちのきいた方法ではあるが。

 米国マイクロソフト社は,ウインドウズ2000の最新ベータ版とIISサーバーを搭載したウェブサーバから,ターゲットファイルとユーザーアカウントの取得に挑戦するよう,ハッカーコミュニティーに挑戦状をたたきつけた。だが,挑戦者はシステムへ侵入を試みることさえできなかった。サーバはこの日,ほとんど1日中,ダウンしたままだったからだ。また,同サーバー内のホームページはHTMLとJavaScriptに問題があり,まったくアクセスできないページもあった。マイクロソフト社はサーバーダウンの原因として,ルータの問題とシアトルを襲った激しい雷雨を挙げている。

 う〜ん,面白い:-D。どうしてこう面白いことをいつもできるのだろう。まるでわざと話題を振りまいてくれているようだ。まぁそれにしても,このウインドウズ2000のハックテストは,コミュニティーからは「タダで自己宣伝を行うための明らかな策略」と云う声が上がっている。確かに,このテストを経て,より強固なシステムを作り上げるため,とかそういうのはなさそう。

 「屏風の中にいる虎をとらえることはできません。さあ,とらえますから屏風の中から虎を出してください」と云ったのは一休さんだったろうか? まさに屏風の中の虎,絵に描いた餅。誰もスタンドアローンのマシンをハックすることはできない。そりゃあ世界最強のハッカーが束になったとしても。どうしてもハックしたいとなれば,あとはトンカチを持ってマイクロソフト社を訪問するしかないかな? さすが,マイクロソフト。考えることが違うな(^_^)。(ちなみにそのテストウェブサーバーはここ。5日夜11時時点でまだ繋がりません(^^ゞ)




[1999.08.05]
  砂上の楼閣を映す鏡


 ▼「世界最大」のサーチエンジンがオープン(INTERNET Watch)
  http://www.watch.impress.co.jp/internet/www/article/1999/0803/fast.htm


 打ち寄せる波,引く波,その一瞬一瞬が,ワイヤードの姿。本来,そのすべてを映し出す鏡を創るなんてことは不可能なのだ。が,それを第一に目指す,サーチエンジンの登場,楽しみだ。

 ノルウェーのファーストサーチ&トランスファー社は2日,米国デル社のシステム上で稼働している,「世界最大」のサーチエンジンファーストサーチを発表した。現時点で全世界には8億のウェブページがあると云われているが,ファーストサーチにはそのうち2億個のURLが含まれており,全てのウェブの25%をカバーしていることになる。同社ではこのサーチエンジンを大手のポータルやサーチエンジン,ISPやコンテンツサイトに提供していく予定。

 ちなみに日本でいちばん多くのURLが含まれているgooは1億2000万URLだそうだ。それだけ見るとたいした差がないように思うが,ファスト・サーチ社は1年以内に世界の全ページを検索できるようにするとコメントしているらしい。まぁそれはちょっと大げさだが,更新頻度をあげながら,URLも増やしつつ,また,検索スピードもストレスないものを維持するという,大きな目標を掲げている点は期待したい。

 とは云うものの,ワイヤードはいわば砂上の楼閣。昨日あったものがなくなり,昨日なかったものが今日は存在する。また,一切のリンクを拒否するサイトも存在する。現在の8億,と云うURLの数も,ちょっと眉唾物だが,それでもまだまだ飽和点には全然達していないだろう。半年前には4〜5億ページと云われていたのだから,まだまだワイヤードは加速度的な進歩で膨張している。サーチエンジンは,その速度に追いつけない。けれども,はるか後ろを行く伴走車としては,心強い。

 どうでもよいことなのだが,ファーストサーチ社のマーク,見たことあるよナ,そうそう,これこれ。あんなソフトや,こんなファイルを,探すのによく利用していますよ(^^ゞ。




[1999.08.04]
  まるでポイ捨てのように


 ▼クラッカーがシマンテックのサイトを「更新」(WIRED News)
  http://www.hotwired.co.jp/news/news/technology/story/2833.html


 情報は常に双方向に流れるとは限らない。ウェブページとは基本的に,双方向ではない。だからこそ,そうだからこそ,攻撃が成立する。その,傾向は変わらないだろう。

 アンチウイルスおよびセキュリティー関連ソフトウェアで首位を誇る米シマンテック社のウェブサイトが8月1日,BlOwと名乗るクラッカーによって書き換えられた。シマンテック社は数分のうちにその書き換えを修正したうえで,同社のネットワークがBlOwのワームの被害を受けているという噂を否定した。シマンテック社のアンチウイルスソフト「ノートン・アンチウイルス」は,出荷ベースで,米国のアンチウイルス・ソフトウェア小売市場の64%をシェアを占めている。

 クラッカーが是非とも成功させたいクラックの対象としては,一つは法務省や警察などの公共機関,二つ目が新聞社やテレビ局などのマスコミ,そうして三つ目がアンチウイルスやセキュリティー関係のソフトウェアメーカーだろうか。自分の名前を売るのにこれほど好都合なところはない(書き換えられたシマンテックのサイトのコピー)。

 ホームページの書き換えなんて,実はたいした作業ではない。日本でも6/12に毎日新聞のサイトが6/20に朝日新聞のサイトが書き換えられた。まぁFTPのIDとPASSがわかればいいんだから,数打ちゃ当たる(証拠を消すなどの作業を考えなければ,だが…)。Webは,掲示板やチャットなどを除いて,ワイヤードには珍しく双方向には流れないメディアだ。そこに,本能的に僕らは拒否反応を感じるのかもしれない。ホームページ書き換えは,まるでポイ捨てのように,簡単に行われ続ける犯罪と,考えたほうがよさそうだ。




[1999.08.03]
  漆黒のブラックボックス


 ▼Compaqのセキュリティホール(Virus LAB)
  http://www.otsuka.bunkyo.tokyo.jp/virii/news.html


 見えない,ことは知らないこと。世の中には知らなくて良いこともいっぱいある。だが,知っておいたほうがいいのに,隠されていることも多い。ウィンドウズにしてもマックにしても,その隠させているものは,表に現れていることよりもよっぽど多い。そのことは,知っておいて,損はない。

 米国コンパック社は,同社のプレサリオなどのパソコンで,外部からのアクセスが可能となり,ファイルの消去やディスクのフォーマットが可能になるセキュリティーホールがあることを公表した。これは,ウィンドウズ98と,AOLブラウザかインターネットエクスプローラーを使用している場合に起こり,『スポーンアプ』というJavaアプレットを使用し,侵入を許す。そのアプレットがローカルにある必要がないため,ウェブブラウザを通して他社のパソコンでも条件が整えば,同様の侵入が可能と思われる。コンパック社は,ユーザーへのオンラインサービスを行うために,このアプレットアプリケーションを組み込んでいたようだが,非常に重大なセキュリティーホールとなっている。

 GUIの部分を大きくし,利用者に些細な事柄を隠蔽した現在のOSは,とてつもなく大きな,そして危険なブラックボックスを抱えている。もし,ネットワークを介して,そのブラックボックスに入り込むことができたら,利用者に気づかれることなく,そのパソコンを操作することができる。特に,ウインドウズは,OSとIEの接触を行ったり,アクティブXなどオンラインで実行できる屈強なプログラムを用意していることで,危険は大きいと思われる。

 Java自体はセキュリティーに配慮したプログラムだ。だが,このスポーンアプには,コンパック社によって安全を証明する署名がなされており,ファイル消去やフォーマットのコマンドまで使用できるという。大いなる,そして,危うい要素がいっぱいのブラックボックス。パソコンを使うかぎりは逆らえないのだが,僕らは大きな爆弾を抱えたシステムの中に生かされているということは,肝に銘じておいてよい。




[1999.08.01]
  ワイヤードとETの交差点


 ▼UFOを追求するUSWeb創業者,宇宙旅行研究所を設立 (ZDNet News)
  http://www.zdnet.co.jp/news/9907/31/b_0730_12.html


 ワイヤード構築の最大のファクターとなる人物は,地球外生命体に関する噂の源と,リンクしている。そこに関連性を見いだすのは,21世紀を目前にした現代のお伽話,のようじゃないかな?

 「今日の技術進歩の多くはエイリアンによるものだ」と,UFO研究のために自分の会社から退いたUSウェブ社創業者のジョー・フィアマージ氏が29日,国際宇宙科学機構という研究所を立ち上げた。この研究所は,物理学研究に刺激を与え,惑星間の宇宙旅行を実現し,また,人類とエイリアンとの初のコンタクトの計画を目標としている。

 現慶応義塾大学客員教授テッド・ネルソンが現在のウェブの土台部分と云えるハイパーテキストを考案したのは,シオドア・ネルソンのザナドゥ構想を具現化することを目的としたもの。そのシオドア・ネルソンは,MIT工学部長のヴァニヴァー・ブッシュに学んだ。だが,そのヴァニヴァー・ブッシュに落とされている影がマジェスティク12(MJ-12)文書に関することだ。MJ-12文書とは,当時のCIA長官を筆頭とするトゥルーマン大統領直属の12人のメンバー(MJ-12)が1947年のロズウェル事件など地球外生命体に関する調査結果をまとめたもので,1987年に差出人不明の告発文書として公に明るみに出た(MJ-12文書の内容.txt)。その文章中で,ブッシュはMJ-12の主要メンバーとしてあげられている。そんなブッシュの「記憶の拡大構想(MEMEX)」は,ハイパー・メディアシステムの元型であり,シオドア・ネルソンのザナドゥ構想,テッド・ネルソンのハイパーテキストは,ここに端を発していると云ってもいい。

 長々と説明してしまったが,現代のワイヤードの基礎的な理論と,地球外生命体に関する噂は,そこんとこでクロスする。元USウェブの社長は新興宗教の教祖になるんじゃないかと云われている胡散臭さが漂う人だが(^^ゞ,ワイヤードの爆発的な拡散には,目に見えない力が存在しているのじゃないかと疑いたくなるのも事実だ。そんな考えに捕らわれてしまうのも,うなずけなくは,ないな。




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